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大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)4838号 判決

原告

小川光江

ほか一名

被告

茨木市

ほか一名

主文

一、原告らの請求をいずれも棄却する。

一、訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告ら

被告らは各自、原告小川光江に対し金四、六九九、〇四九円、原告小川政男に対し金七一一、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年九月一五日(訴状送達の翌日)から右各完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。との判決ならびに仮執行の宣言。

二、被告ら

主文同旨の判決。

第二、当事者の主張

一、原告ら、請求原因

(一)  本件事故の発生

日時 昭和三九年四月五日午後五時五〇分ころ

場所 茨木市大字奈良六四八番地先道路上

事故車 軽四輪貨物自動車(六大に五二〇一号)

運転者 被告西口

態様 原告光江が北へ向いて歩行中、前方から南進してきた事故車が近くの電柱から路面を横断させ引いてあつた電線を引つかけたまま走行してきて、原告光江の足にひつかけ路上に転倒させた。

受傷 原告光江は頭部顔面挫傷、兼右橈骨皸裂骨折、胸部打撲症等の傷害をうけた。

(二)  帰責事由

1 被告会社について

被告会社は被告茨木市が同所において建設中の玉櫛保育所の建設工事の請負施行者である。右工事のため道路を横断して、道路の反対側の電柱から電線を引き、路面上をはつている危険性を承知のうえで、工事用機械器具の動力源として使用していた。このような状態の下において工事を施行する者は、交通の安全がおびやかされることのないよう当然十分な安全設備を設けるなどの方策を講じ、第三者に危害を及ぼさないようにすべき義務がある。しかるに被告会社は交通の頻繁な住宅地内において、何らの方策も講じなかつた過失があり、本件事故を惹起する原因となつた。

2 被告市について

被告市は、前記被告会社の工事の施行全般にわたり総合的に管理、監督していたものであるから、注文者として第三者に危害を及ぼさないよう工事を企画し、注文指図して実施させる義務がある。本件事故前に右工事現場の近隣者あるいは市会議員植山正が、被告市の土木課を訪ね、口頭で電線が右現場近くの路面をはつている危険性を指摘して注意をしたことがあり、被告市においてその危険性を十分熟知していたのにかかわらず、危険防止について当然なすべき指図もしなかつた過失がある。

3 被告西口について、

被告西口は、事故車の進路前方に障害物がある場合、徐行または一時停止して事故の発生を防止する措置をとるべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り漫然と事故車を進行させた過失がある。

(三)  損害

(原告光江の治療経過等)

前記受傷により事故後昭和三九年五月九日まで茨木市永代町、国里医院へ通院加療、全治せず。同年一二月二二日同市茨木吉原眼科において右受傷に基づく脳下垂体腫瘍による視神経萎縮および耳側異名半盲(両眼)と診断された。一〇数か所の病院等の治療をうけたが甲斐なく、昭和四二年三月二三日大阪赤十字病院において下垂体腫瘍により右眼失明、左眼耳側半盲との診断をうけた。

原告光江関係

1 療養関係費 合計一九九、〇四九円

国里医院分 八、二六五円

吉原眼科医院分 二三、九〇八円

高槻医大病院分 三、二三七円

細見医院分 八九〇円

竹下歯科分 二八七円

佐藤歯科分 九二〇円

笠井病院分 二一〇円

上牧医院分 一、〇八〇円

県立尼崎病院分 七、四八五円

豊中診療所分 五九〇円

耳原病院分 六、七〇〇円

大阪赤十字病院分 一四五、四七七円

2 慰藉料 四〇〇万円

前記治療経過のほか、原告光江は事故後度々発作的に貧血状態におそわれ、時や所を選ばず倒れ一人歩きは到底困難な現況にあつた。しかも失明等による後遺障害は少くとも自賠法施行令別表第七級に相当する。原告光江は事故当時保険会社の外交員として勤務し月額一五、〇〇〇円の収入を得られる筈であつたが喪失し、事故後現在に至るまで悲惨な生活を続けている。

3 弁護士費用 五〇万円

原告政男関係

1 逸失利益 七一一、〇〇〇円

原告政男は、妻である原告光江の視力の失われるのを案じ、その症状から放置できず、通院時の付添などで勤務できず、昭和四一年三月以降浜口工務店こと浜口富士幸方における職を失うに至つた。

原告政男の一か月平均給料 三九、五〇〇円

昭和四一年三月から翌四二年八月まで一八か月分の逸失利益は七一一、〇〇〇円である。

(四)  よつて、原告らは被告らに対し、第一の一記載の金員および遅延損害金の支払を求める。

二、被告西口

(一)  請求原因に対する認否

本件事故の発生は、原告ら主張の日時場所において、被告西口運転の事故車が同所を進行したこと、原告が歩行中転倒して負傷したことは認める。その余否認

帰責事由、被告西口の過失を否認。

損害はすべて争う。

(二)  事故原因について、

原告光江は、転倒について事故当時被告西口に何ら説明せず、その現場は未舗装の田舎道で、付近に玉櫛保育所の工事場があり、道路上に木片等が散乱し、しかも夕刻の薄暗いときであるから、原告光江が何らかにつまづいて倒れたものと推測せられ、電線に足を奪われたものと速断できない。

かりに路面に横断して引いてあつた電線に足を奪われたものとしても、被告西口はこのようなことを知らなかつたのであり、そのうえ路面に電線が引かれていることは稀有のことで、運転者の予想しえないところである。ことに薄暮相当の速度で自動車を進行させていた被告西口が、このことを知らなかつたのは、やむをえないもので同被告に過失があるものとはいえない。

(三)  事故と傷害との因果関係について

原告光江の受傷は頭部、顔面挫傷、右橈骨皸裂骨折、胸部打撲のみで、その余の脳下垂体腫瘍等は顔面挫傷によつて生ずるものと考えられず、その発生時期を異にし事故との因果関係はない。

(四)  過失相殺

原告光江は路面に横断してある電線を認めることができた筈で、これに引つかからないよう注意して歩行すべきであるのに、漫然と歩行していた過失がある。

(五)  示談の成立

被告西口は原告らとの間に昭和三九年四月一一日、同被告が治療費一五、〇〇〇円、慰藉料三万円を支払うこととし、原告らが今後本件事故について一切の要求や示談について何ら異議のないことを約し、示談が成立した。そして同月一七日被告西口は右金員を支払つたのであるから、本訴請求は失当である。

三、被告会社

(一)  請求原因に対する認否

本件事故の発生は態様中「近くの電柱から路面を横断させ引いてあつた電線」の部分を否認し、その余認める。

帰責事由中、被告会社が茨木市から玉櫛保育所の建設工事を請負い施行していたことは認める。その余否認。

損害のうち、原告光江の国里医院への治療、脳下垂体腫瘍等の診断がなされたことは認めるが、その余は争う。

(二)  請負工事現場の状況について

被告会社は前記保育所建設工事を昭和三九年三月末日までに完工したが、茨木市からの要請で事故当時手直し工事中であつた。当時電気ドリル、同カンナ等の動力源として保育所の西向い側の岸田止方家屋の北側にある電柱から、同家屋の上空を横切り保育所の西側にある支柱上端部へ直接電線を引いて固定して使用していた。ところが、本件事故の一因をなした電線は、岸田方の南隣りにある岩本方門前の街灯柱に取りつけられていた電線であり、これを被告会社において使用していたものでなく、この街灯柱の向い側は保育所運動場であつて、この電線を使用する必要は現場の状況からもなかつた。従つて、右電線を被告会社において所有ないしは使用保管に係るものでなかつたから、原告の主張は失当である。

(三)  原告光江の傷害と事故との因果関係

原告光江の事故当初の受傷は昭和三九年五月九日まで通院して快ゆしている。ところが事故時から八か月余を経過して吉原医師により脳下垂体腫瘍の診断がなされ、その後昭和四二年三月二三日大阪赤十字病院において同じ診断をうけているが、この疾病については事故との因果関係は明らかでない。

(四)  示談について

被告会社は、昭和三九年四月一一日本件事故による責任の存否はともかく訴訟を回避しうるならばと、訴外満留満夫をして原告光江と示談交渉に応ぜしめ、慰藉料三万円を支払うことで解決した。

四、被告茨木市

(一)  請求原因に対する認否

被告市が被告会社に対し玉櫛保育所の建設工事を請負わせていたことは認める。その余はすべて争う。

(二)  被告会社は完成した保育所の建物について事故当時若干の手直し工事をしていたのであり、被告市としてその工事方法について特段の指図をしたわけでないから、本件事故についての責任はない。

(三)  本件事故原因となつた電線が付設されていた電柱と被告会社が工事用に仮設した電柱とは全く別個である。

五、被告らの抗弁に対する原告の答弁

1  示談の成立は認める。

しかし、昭和三九年四月一一日の示談成立時において、原告はその後発生した症状、後遺症、これに伴う損害の発生を全く認識できない状態であつた。従つて示談当時予想されていた軽微な損害についての示談であるから、その後予想しえなかつた損害についてまで請求権を放棄した趣旨ではなく、その効力は本訴請求に及ばない。

2  過失相殺は争う。

第三、証拠関係〔略〕

理由

一、本件事故の発生

被告西口、被告会社は事故発生の態様の一部を除き認めるところである。また被告市においてすべて争つているので〔証拠略〕によると、次の事実が認められる。

原告光江が昭和三九年四月五日午後五時五〇分ころ、茨木市大字奈良六四八番地先路上を南から北へ向つて歩行中前方から被告西口運転の軽四輪貨物自動車(六大に五二〇一号、以下事故車という)が西側の電柱からたれ下つて路面に横たわつている電線を後輪でひつかけて進行して来たため、原告光江がこの電線に足をすくわれて路上に転倒した。そのため同原告が頭部顔面挫傷、右橈骨皸裂骨折、胸部打撲症の傷害をうけた。

二、被告西口の責任

〔証拠略〕によると、次の事実が認められる。

本件事故現場は南北に通ずる幅員五・七メートルの茨木市道上で、非舗装のでこぼこ道である。現場から約二〇メートル北側には丁字型の交差点となつていて、同所の東南角から現場東側にかけて玉櫛保育所があり、交差点東西角から現場西側へ岸田、岩本、磯岩の各住宅が順に並んでいる。現場の道路は交通量は少く、ほぼ直線で見とおしは良効である。当時保育所はまだ工事中であつて、南側の空地にはウインチ等の工事用機械が置かれていた。また岩本方前に仮設電柱が一本立つていて、先端から電線が路面にたれ下つており、路面に出ている線の長さは約一三・八メートルであつた。

被告西口はまだ明るい状態であつたので、ライトはつけず、事故車を時速約三〇キロメートルで道路の右端部分から約一・二メートルの間隔を保つて南進していた。丁字型交差点を過ぎたあたりで右前方に電柱から電線のたれ下つているのを現認していたが、気にかけず進行した。そして道路の左端を歩行していた原告とすれ違つたとたん、事故車の助手席に同乗していた和田範彦が叫び声をあげたので、事故車を停めてみると、原告がうつむけに転倒していた。これは事故車の右後輪内側にたれ下つていた電線がひつかかり、引つぱられた電線で原告の足をすくつたためであつた

原告は道路西側の板塀に沿つて左端から〇・八メートルあたりを歩行しており、事故車の進行にも気づいていたが、不意に足をすくわれ負傷した。

前掲証拠中右認定に反する部分は信用できず、他に右認定を左右しうる証拠はない。右認定事実によると、被告西口は、道路上に危険物があるかどうか、十分注意すると共に、これを認めた場合歩行者等に対して危害を加えないように、十分安全を考えて運転すべきであるところ、電線のたれ下つているのを認めていながら、危険がないものと軽信して、何ら減速、徐行することもなく進行したため、電線を事故車の右後輪付近に引つかける結果となり、本件事故を発生せしめた。同被告には安全運転を怠つた過失があるものといわねばならず、民法七〇九条による過失責任がある。

三、被告会社の責任

被告会社が茨木市から玉櫛保育所の建設工事を請負い施行していたことは、被告会社の自認するところである。〔証拠略〕によると、事故の原因となつた電線は、黒い普通のもので二本あり、電柱も工事用のため電線のみつけられていたものであつたこと、電線は岩本方軒下にある碍子から引つぱられていたもので当時電気は通つていなかつたこと、玉櫛保育所の工事現場では昭和三九年三月末で工事がほとんど終了し、事故当時一部手直し工事が残つていたのみで、工事中には電動式大工道具を使用する必要上、一〇〇ボルトの電力源を必要とし、そのための電線を引いていたが、事故当時にはもはや電力源を必要としなかつたこと、茨木市の係員沢井平一が、事故の翌日現場を見に行つた際には、すでに電線が片付けられて、その状況を見ることができなかつたことがそれぞれ認められる。

〔証拠略〕によると、被告会社は電力源として丁字型交差点の東側の電柱から、保育所北西角にある仮設電柱へ直接引いていたものであり、岩本方前にある電柱から引いたことはない旨述べているが、当時工事用のため電線を引く必要が現場付近において保育所以外にあつたとは認められず前掲各証拠に照してたやすく信用できない。他に右認定を動かしうる証拠はなく、右事実によると、該電線は被告会社が保育所工事のために引いたもので、工事が一応終了したため、電気を切つて岩本方前の仮設電柱にたれさがつたままの状態で放置しておいたものであり、撤去するのを怠つていたものと推認できる。被告会社が工事用に使用した電線を路面にはわせたまま放置していたのであるから、通電していなくても、路上を通交する人や車両に危険を及ぼす可能性は十分ありうることで、被告会社に該電線の保存についてかしがあつたものといわねばならない。そのため本件事故発生の原因ともなつたのであるから、被告会社が民法七一七条による責任がある。

四、被告市の責任

被告市が被告会社に対して玉櫛保育所の建設工事を請負わせていたことは同被告において認めるところである。

〔証拠略〕によると、被告市は保育所建設工事について、工期四か月間で引渡を昭和三九年三月三〇日としたが、手直し工事のため同年四月七日としたこと、市の係員が三、四回現場に赴き、工事材料、規模、構造が設計どおりなされているかを監督した程度で工事方法については被告会社に委せていること、茨木市会議員で事故現場近くに住む植山正は、事故前保育所工事の大工仕事が行われていた間に工事用電線が道路を隔てた電柱からたれ下つて路面をはい、通行人がこれをまたいで通り、車両もその上を通過するのを目撃して、茨木市土木課の松岡課長等に対して、口頭で事情を説明して危険である旨を注意したこと、これに対して被告市から被告会社に対しては何らの注意もせず放置されていたことがそれぞれ認められる。

右認定に反する〔証拠略〕は信用できず、他に右認定に反する証拠はない。右事実によれば、被告市は保育所工事の注文者であるところ、請負人である被告会社の工事方法について第三者に危険を及ぼすおそれのあることが、十分予知することができたにもかかわらず、被告会社に対する適切な指図をなさず、そのまま請負工事を続行させていたのは、被告市の注文、指図について過失があるものといわねばならない。従つて民法七一六条但書による責任がある。

五、原告光江の症状、事故との因果関係

(一)、原告光江が本件事故により頭部、顔面挫傷等の前記傷害をうけたことは明らかであり、〔証拠略〕によると、鼻血、右腕関節部に劇痛、後頭部に軽度の圧痛があり、胸部の前後に自発痛があつて、事故当日の昭和三九年四月五日から翌月九日まで茨木市永代町の国里医院へ通院して治ゆしたことが認められる。他に右認定に反する証拠はない。

(二)、ところが〔証拠略〕によると、原告光江は昭和三九年一二月二二日視力障害を訴えて茨木市茨木の吉原眼科医院において治療をうけ、その後脳下垂体腫瘍による視神経委縮耳側異名半盲との診断がなされたことが認められ、〔証拠略〕によると、昭和四二年三月二二日大阪赤十字病院において下垂体線腫視神経委縮との診断がなされて、まもなく手術をうけたことが認められる。

右山本の証言によると、本件事故によつて頭部に打撲をうけた場合、硬膜外、硬膜内に血腫が起ることがあるが、これによる症状は事故から二四時間から三週間内に発生し、慢性硬膜下血腫でも三か月経過して起るものであること、下垂体線腫はできる原因がよく分からないが本件事故による外傷から生じたものであること、脳腫瘍のうち髄膜腫のみが外傷と関係あるといえるが、他の腫瘍は関係がないことが認められる。

右認定に反する原告ら各本人尋問の結果は信用できず、他に右認定を動かしうる証拠はない。

そうすると、原告光江の視力障害は下垂体線腫という脳腫瘍によるもので、本件事故とは全く因果関係のないものであることは明らかである。

六、被告西口、被告会社の示談成立について、

〔証拠略〕によると、原告光江と被告西口、被告会社の社員満留覚との間で昭和三九年四月一一日原告光江の治療費のほか、金三万円を支払うことで示談が成立し、原告光江は今後一切の要求はもちろん異議もない旨を約したこと、被告西口は同月一七日に金四五、〇〇〇円を支払い、被告会社からも金三万円を支払つたことがそれぞれ認められる。右認定に反する証拠はない。

示談の成立は事故発生から一週間目であるが、国里医院における前記原告の症状、治療期間からすれば、その症状を考慮して示談がなされたものであり、本件事故による損害として予測しうる範囲内で解決されたものというべく、請求権放棄の条項は効力があり、もはや原告光江が右被告らに対して本件事故による損害賠償を求めるいわれはない。同原告に損害賠償請求権がない以上、原告政男の請求も理由がないこと自明である。

七、損害(被告市に対する関係)

原告光江関係

1  療養関係費

国里病院分 六、一七〇円

昭和三九年五月九日までの分、交通費を含む。(〔証拠略〕)その他のものは、前記症状から事故と因果関係のないものであり認めることはできない。

2  慰藉料 金三万円

前記五、(一)の治療期間、症状、昭和三九年四月の事故でありその事故の状況等諸般の事情を考慮すると、原告光江の精神的苦痛に対して右金額が相当である。

原告政男関係

逸失利益 認めない。

事故と因果関係のない部分の請求であり、認めることはできない。

八、ところで、原告光江は、被告西口、被告会社からすでに合計七五、〇〇〇円を受領している。この内治療費として被告西口本人尋問の結果によると、金四万円程度であつたことが認められ、乙一号証の趣旨からみても被告西口において全額支払つたものと考えられる。そうすると、残り三万円は慰藉料に該当するものであるから、原告光江としては、すでに右両被告から自己の損害額についてすべて弁済をうけたのであり、被告市に対する前記損害額は、右支払をうけた示談金でもつて損益相殺すればなくなる結果となる。しかして原告光江の請求する弁護士費用については、損害額がない以上これを認めるべき理由がない。

九、結論

そうすると、以上説示したとおり、原告らの本訴請求はすべて理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤本清)

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